既存顧客合わせすぎ現象は、確実に会社の体力・魅力そして将来を蝕んでいく・・・

■売上高ではなく利益重視への視点変化
 
過去は、安くてそこそこに良いものであれば、「他の人が持っていて、自分が持っていない」ことが不満で「所有こそ」が判断基準であった。買いたいと思うものには、自分の価値観の中でお金を惜しまないが、それ以外のものについては、必要最小限のみ購入するようになっている。つまり、均一的な物を多くの人に売ろうとすればするほど、結果的に、誰も買ってくれない逆現象が発生している。過去は所有の判断基準を基に大量生産で儲けていた。今は独自の価値判断基準に対し、知恵で稼ぐ時代になっている。
 
会社を判断する企業人の視点は、売上規模を軸に見ている事が今までは多かった。あの会社は大企業だから信頼できる、あの会社は売上が伸びているから良い等の売上キーワードに目が行きがちであった。しかし、商品・サービスを判断する消費者の視点は、数値に関連する価格だけでは判断しなくなってきている。価格は重要だが、それだけが決め手にはならない。
 
消費者にとって、本質的な価値を感じられないものには手は出さない。昨今の伸びている企業は、高品質で価格は手頃なものを供給している、価格が少々高くても、今までなかった良いものを提案している点に特徴がある。この特徴は売上規模とは関係ないテーマである。つまり、「会社を判断する企業人の視点」と、「商品・サービスを判断する消費者の視点」にズレが生じている。
 
この大変化で、過去のままのやり方「大量生産=売上至上主義」を堅持しても、下手な値引き合戦や無料サービスの拡充など、消耗戦に陥り、会社を維持・発展させる利益を削っていくことになる。どれだけ頑張っても、業績が上がらないのは、利益の稼ぎ方の変化に気付かないか、気付いても過去の経験をベースにするために対策が思い付かない根深い問題を企業に投げかけている。この問題は今後、企業の存在自体を破壊しかねないものになる。つまり、「売上」ではなく「利益」とそれを生み出す仕組みに注力することである。
 
 
■密着する内容が変化している
中小企業は別名『地域密着型企業』ともいわれます。これはある特定の限定された地域
内(市・県・地区)においての商売スタイルを意味するものであります。今後はこの地域密着型企業からの転換が求められるでしょう。地域密着型企業はある特定地域内で、ある一定のマーケット需要がある事を前提に成り立っております。
 
しかし、法人客を対象に考えた場合、総需要から見て、日本の場合は法人の数、業者の数が多かったが廃業・M&A等でその対象先は減少化傾向であり、且つ国内・海外からの同業他社の進出攻勢による強者の競争激化になっている。又、消費者を対象に考えた場合、高齢化社会・生活様式価値観の多様化・購買方法多様化等で大きなマーケット構造の変化が現実となっております。しかし、我々ミクロ経済における中小企業の生きる術の『密着型企業 スタイル』は過去も今日も将来も変わらないと確信致します。
 
それは人なし・ものなし・金なしのナイナイ尽くしの戦い方で生き残る最大突破の戦術
は『密着型』 であるからであります。では今後、何に『密着』 するかでありますが、それは『価値への密着』であり、『価値密着型経営』の推進であろうとご提案いたします。
 
■価値密着経営とは
価値密着型経営とは自分が、自社が生存していく為の生存価値、機能をどうやってつくるかであります。価値への密着とは、自社が生き抜く価値を明確に絞る事であり、その価値への密着が価値密着型経営の推進となります。
 
中小企業の成長軌道は、顧客に合わせて成長する事が多かったし、それが中小企業の生き残る道でもあった。しかしこの常道に変化がでている。市場の構造変化は企業にどのような価値に密着するのかを明確にする事を求めており、顧客に合わせすぎる密着では、売上高や利益率の確保できない。
 
つまり、既存顧客合わせすぎ現象は、確実に会社の体力・魅力そして将来を蝕んでいく。よく理解していただきたいのが、顧客というマーケットは存在しない事です。顧客をセグメント・カテゴリー化するから、そこにマーケットという視点が生まれる。『自社の真の飯の種は何なのか?』、『自社にとって真にお付き合いしたいお客様とは誰なのか?』、『そのお客様は一体わが社に何を要求しているのか』を深考し、具体的な展開を図る事が、自社の生存につながります。
 
戦略とは勝てる土俵を見つける事から始まります。自社の価値を認めてくれる顧客がいるマーケットを探し、選ぶ事であり、そして、そのマーケットから選ばれる存在
になる事です。ターゲットを絞る事は、すなわち、「顧客を選ぶ」という事であり、自社の価値を「最も高く」買ってくれる先に自社の商品・サービスを提供すべきで、そこに合わせて更に価値を高めていかなければならない。
 
マーケッテイングは、顧客を選ぶ事であり、その選んだ顧客に「選ばれる存在」になる事です。その選ぶ基準は、自社の商品(製品・サービス)の付加価値を 理解し評価してくれる先です。会社を継続繁栄させる為に『自分は、自分達はこれで戦う、この道を進む』という道標、軸足を持つ事であります。密着すべきものに対し、我社の価値としての『考え方・姿勢・商品・サービス・術』を明確に打出し、その主張に対し一体感を持った集団として邁進していく事が『価値密着型経営』となります。
 
どのようなお客様からご指名・ご用命を頂きたいのか?どんな仕事をしたいのか?という我社の価値を明確にし、それに応える商品・サービスを開発しなければならない。それが既存エリア・既存業種・既存顧客・既存商品・既存枠組等を超えて、新たな企業の構造を創造していく時代に入っております。
 
価値への密着とは例えば、下請け企業に徹するなら、絶対に外されない納期力であり、品質力を装備する事で ある。高齢者にターゲットを絞るならば、高齢者の中でどのような特徴を持った層をターゲ ットにするのか、その人達がどのような生活様式・価値観を持っているかを徹底的に 調べ対応していく事である。
 
既存エリア内だけでは収益構造が成立しない場合は勝てる武器で他エリアへの進出。  もしくは1社単独で難しい場合は連携・M&Aも視野に入れる。
高付加価値路線ならば、絶対値引きをしない・させない販売技術武装をすべきである。
低価格路線ならば、ゲリラ戦法に徹し、認知度を徹底的に上げることである。
スピード力で勝負するなら、コミュニケーションコンタクトNO1を目指す事である。  コミュニケーションコンタクトNO1とは先様で困り事があった時に最初に顔を浮かべてもらうように様々な接触を行う事である。価値に密着する方法は色々とあります。
 
経営者・後継者・役員・部門長層を中心として『価値密着型経営』の推進よる事業構造
づくり』に、各企業様が精励されることをお祈り致します。