中小企業の経営者を演じるから共通する人種になってしまう・・・

■人種になる背景
こんな事も出来ないのか!そんな事もわからないのか!
中小企業の経営者は幾度、苦虫をつぶした気持ちになっただろうか?
『肌感覚と常識感覚の違い』を頭と心で埋めるのに時間がかかる。肌感覚とは現場での出来事であり、常識感覚とは育ってきた環境から作られた価値観である。この違いに経営者は悩まされる。

しかし自分が好きでなった創業者・ならざるを得ない状況でなった経営者・継承しなければならなくなった2代目等 いずれにしても現在経営者である事には変らない。

■中小企業の組織特性
中小企業の組織特性は人・物・金・管理なしのナイナイ尽くしのバラバラ組織態である。常に兼任体制の1人3役主義で実務を行い、必要最低生産性を確保している。大手企業の社員と中小企業の社員を比較すると基礎的な能力が落ちる。例えば基本動作が出来ない、決め事を守らない、学習能力が劣る、自信が無くあきらめムードがあり、会社をやけに『ヒトゴト意識』で見ている。
反面、『オヤジの背中を意識し、一体感を持つ事を望んでいるし、働く事に労を惜しまない能力』は非常に高い。
多くの社長は自分の地の性格はNO2向きだと答えられる。しかしこのような特徴を持つ組織をまとめていくから、中小企業の社長は『共通した人種』となる。
上記の特徴を持つ中小企業を20年、30年まとめれば必然的に中小企業経営者として共通する人種になってしまう。
その性格と行動の特性は以下の通りである。
 
■中小企業経営者の性格・行動特性
先ず、中小企業の社長は好奇心旺盛で、元気でタフであり、年齢の割りに若々しい。朝は早く、嫌なことは率先して自ら行う。会社の鍵を開けるのも閉めるのも社長という会社は案外多い。朝は早く来て、掃除から始まり、新聞の精読、そして一仕事。それから社員を迎える。夜は社員の帰りを待ち、今日の報告をさせ、最後に戸締りをして帰る。本当に経営者はよく働く。

■中小企業の経営者は情に厚い
次に中小企業の社長は情に厚い。情に厚くないとわがまま人間動物園集団を束ねる事は難しい。昨今の後継経営者は六大学を出たりと高学歴になっている。それがすべてではないが、とにかく自分が培ってきた価値観と生き物として中小企業を見た場合にあまりにも感覚の違いが有りすぎて、誰もが戸惑う。しかし、5年・10年と人種としての中小企業経営者をやれば、情に厚くならざると得ない。「わかっていてもわざとだまされたり」、「注意をしたいが言えば辞めてしまう」、「時には借金の肩代わりをしたり・・・・」、「社員に子供が出来たら我が子のように喜ろこんだり・・・」と共に泣き笑う共感性が高い。大企業では考えられない事が日常で起こっている。だから反面、社長を中心とする一体感は強くなる。
 
■経営者は根気強く当たり前の事を大切にする
又、根気強く口やかましい。いつも社員の顔を見れば、基本的な事を繰り返し話している。「お客様との約束は守れ」、「挨拶はキチンとしろ」、「人様に迷惑を掛けるな」、「時間を守れ・・・」と挙げればきりがない。常に常識人としてのバランスを考えるから、礼儀礼節等の道義にはうるさいし、嘘をつかれたり、約束を守らない事が大嫌いである。
中小企業の経営者は独自の対処法を身につけている。苦労を苦労と思わない、見せないように自己訓練したり、孤独感を和らげる術を身につけていたり、清濁併せ呑む事を体に覚えさせている。経営者は白か黒かを判断する人である。しかし、今は判断出来ない、しない方がよいグレーゾーンの判断もある。色々な事が起きる。頭に理解させても、心ではわかりたくない事は沢山ある。
その時に酒を飲んで発散する事もあるだろう。いつも酒だと体も病んでしまう。だから、自然との処世術として覚えていく。

それにいつも危機感を抱いている。いつも何かしていないと気が落ち着かないし、常に現状の問題を見つけ、葛藤し、解決策を考えていく思考回路になっている。だから経営者は短気だしスピードを求める。社員が1週間でやると言えば、3日でやれというし、翌日にはどうなってと直ぐに報告を求める。このスピードの差は会社の事を365日24時間考えている人と240日8時間考えている人の差であるし、そうでもしないと決め事が進まないのである。
 
■経営者は気配りの人
経営者は気配りの人である。非常に細かい事に気づくし、気を配る。数字の合計金額が少しでも違えば、鬼のように怒るし、カレンダーや額縁が歪んだら直ぐに直さないと気が済まないし、食事に行けば食べ方・呑み方・振舞い方まで事細かに注意する。これは正しい習慣づけをしているのである。一社員だけではなく、一常識人としてのあり方を習慣付けているのである。だから、口やかましくもなる。こういう点にも経営者の責任の強さが表れている。又、社員のご家族に祝い事があれば、こっそりと祝ってやるし、ご不幸があれば、必ず社員を励ます。社員が気持ちよく働いてもらう為に気を使っている。
 
■経営者は常に前向き
常に前向きで、創造性・提案力が高い。常に今ある物、今行っているものを活用しNEXTを考えている。基本はケチである。しかし、このケチとは価値観の合わない事をする事がケチという意味である。1億の設備投資はするが、500円の交通費の使い方がソロバンに合わないと言っては猛然と社員と叱る。社員は叱られた意味がわからない。よくある事だ。会社の財布はシッカリ閉めるが、家庭の財布は奥さん任せの方が圧倒的に多い。そして自分の大事な財産として家庭・社員を挙げる経営者は非常に多い。
最後に成長している経営者ほど、素直である。自分の立場をよくこころ得ている人である。経営者は孤独である。しかし、「孤独と裸の王様」は違う。会社では経営者に意見具申する人はほとんど皆無だろう。情報が集まる経営者の振舞い方は「決して、それは聞いた、見た、知っている」とは言わない。それを言うと情報が集まらなくなる事を知っているからだ。人の説明を素直に聞く能力があるから、情報が自然と集まるのである。