決算月変更は戦略の一つである

■決算書の意味合い
 
法人格の企業なら決算書は毎年作成義務があり、所轄の税務署・国税に申告し、必要な税金を収めなければならない。
しかし、多くの会社が求める決算書の意味合いは金融機関等への提出書類としての位置づけが多いのではないだろうか?

金融機関では、融資申込の内容を具体的な数値をもって検証、確認しようとします。融資担当者や渉外担当者が聞き取った内容を、決算書等の資料と照らし合わせるのです。つまり、財務内容、業況、償還力などを3期分の決算書を使って分析し、信用リスクにより格付と債務者区分を決めます。

個別の融資案件において、この取組姿勢をベースとしながら別の視点で再度決算書をみていきます。運転資金の申込においては、赤字先かどうか、資金繰はどのくらい余力があるか、売上高は伸びてきているのか、売掛金や買掛金に大きな変化はないか、借入残高や現預金残高の推移などです。

ご自身の会社の一番良い決算状態の月が1年12ヶ月の中で何月になるかをご存知だろうか?
お客様との取引に最大アピールするのは自社の商品であるが、既存取引先の金融機関、新規の金融機関との取引において、自社を最大にアピールするツールは決算書である。
決算月の選定の多くは税理士さんの指定によって決められた会社が大半であり、自社の戦略的展開に応じて選定した会社は少ない。
  
■決算月選定の損益計算書上のポイント
 
1年間は12ヶ月、12回戦の戦いである。
戦い方には色々な方法はあるが、原則的には『前半ダム型経営が良い』。前半ダム型経営とは3月決算の場合、4~9月の上半期で年間の必要営業利益の60~70%を確保する事である。違う観点から見ると1年間12回戦を理想的には12勝0敗の戦いが良いが、現実は10勝2敗、9勝3敗等の戦いである。

仮に9勝3敗とすると9勝の内、5~6勝の月を上半期に来るように決算月を選定する事である。
何故、前半が良いかというのは下半期赤字が予想される月に対して余裕を持って商材探し等が望めるからであり、且つ来期の対策に余裕をもって望めるからである。後半追い込み型の会社は決算月を迎えるまでに力を使い果たし、翌期の対策が後手になる。
 
■決算月選定の貸借対照表上のポイント
 
損益計算書は1年単位の数値であるが、貸借対照表はある時点での金の流れを表すものであり、決算月を選定する上においては損益計算書より考慮するウエイトは高い。
特に考えねばならないのが、流動資産合計と流動負債合計のバランスであり、流動資産合計>流動負債合計の状態が最大になる時が一番良い。

しかし、流動資産合計の中身も問われるので①仕入れ②在庫③売上④売掛金⑤現預金の流れで、最悪なのが②在庫が1年を通して最高額に到達する時、最高に良いのが⑤現預金が一番多い時に決算を組む事である。

貸借対照表は1年間12ヶ月の中で、ある時点での金の流れを表すかであるから、自社にとって最高状態時の金の流れを表すべきである。
 
■決算月変更は戦略の一つである
ある洋菓子メーカは3月決算から8月に決算月変更しました。
この会社の繁忙期は9月中旬から12月、3月から5月でありますが、上半期・・9・10・11・12・1・2月の内、赤字になる月は2月のみ、下半期・・3・4・5・6・7・8月の内、赤字になる月は7.8月で、必要営業利益の獲得比率は上半期70%・下半期30%である。

8月時点での在庫は年間最少金額ですみ、5・6月の売上高が8月に現預金として入ってくる状態なので、決算月を変更し、内容のよい決算が組めるようになりました。

各社夫々に損益上の特徴、金の流れの特徴があると思いますが、自社にとって一番良い成績を表す月を検討し、必要性があればその月を決算月にする事をお勧めします。