アテネの空に日の丸を・・・・
■水泳日本代表に学ぶ成功事例
現在の水泳日本代表は、世界でも有数の水泳強豪国になっている。その転機となったのが、アテネオリンピックの日本選手の大活躍である。アテネオリンピックで八つのメダルを獲得した競泳日本チームは、その大躍進の原因が「指導者層の若返りと指導方法の変化にあり」と世界中から絶賛された。
以前、この日本チームのヘッドコーチとして、水泳ニッポン復活の戦略を立案・実践し、成果を残された上野広治先生を講演会講師としてお招きし、その大躍進のポイントをお話しいただいたことがある。競泳日本チームはアトランタオリンピックでの惨敗を受け、指導者層・指導方法を大幅に改革し、アテネ大会に備えた。その指導者層のヘッドコーチに就任されたのが、当時現役の高校教師だった上野広治先生である。
上野先生は、以下の5点を改革の柱にした。
〇チーム力の強化
〇所属コーチとの連携
〇国際舞台に強くなるメンタルづくり
〇少数精鋭指導
〇人格的な成長を促す教育
■チーム力を鍛える
また、基本的なコンセプトとして「速いだけでは勝てない。人として強い者が勝利をつかむ」をスローガンに掲げ、人間的な強さを持った選手の育成と、選手が存分に力を発揮できる強いチームづくりを目標に改革を進めた。さらに勝てる選手に必要な要素は「勝利への執念」「不調でも戦える力」「プレッシャーを克服する精神力」だとし、これらの能力の養成をヘッドコーチとしての重要任務と課して努力をされたそうである。
組織として明確な目標を持ち、その方向性を明示し、全員が道に迷わないように具体策を立てられる組織は強い。当時の競泳日本チームのキャプテンは、男子バタフライ競技の山本選手だったが、テレビのインタビューに答えるときには、チームのスローガンをいつも引き合いに出し、チーム力の素晴らしさを訴えていた。
■メンバー全員に目標を理解させ、意識を共有
この日本競泳チームのエピソードは、中小企業にとっても学ぶべき点の多い成功事例である。中小企業では役員・部門長が「ヘッドコーチ」である。ではヘッドコーチとして一般社員に対し、目標達成をあきらめないように日々モチベーションコントロールをしているだろうか?
いや、その前にメンバー全員に目標を理解させ、意識を共有させているだろうか?超一流の才能を持った「あるある尽くし」の競泳日本チームでも基本的な努力をしているのだから「ないない尽くし」の中小企業が基本的な努力をしなかったら、その結果は見ずともわかる。
会社の節目に行うべきことに経営方針の樹立があるが、日本競泳チームも、アテネオリンピックの大会スローガンとして「アテネの空に日の丸を」を掲げ、大会に臨んだそうだ。このように方針を明確に打ち出すことは大切だ。
■方針は繰り返し訴え続ける
ただし、方針は植物を育てるように丁寧に水をやらねば枯れてしまう。訴え続けるから、初めて方針が方針として成り立ち、組織に活動の芯ができるのである。だからこそ幹部は、社員に対して方針を繰り返し説き続けなければならない。そして方向性の灯りを灯していかなければならない。
方向性灯す時間の尺度であるが、経営者は3~5年先である。つまり長期・中期計画を常に見つめながら、今年1年の動きをコントロールする。
部門長(役員含)は1~3年先である。中期の展開、今年の計画、目標を常に意識しながら毎月の動きをチェック、コントロールする。
中堅幹部は3~6カ月である。3~6カ月先の商材の仕込み・仕掛け、毎月の目標の達成度合について毎週・毎日の動きをチェックする。
ちなみに、一般社員の場合は当日~1週間先である。1週間の流れをつかみ、今日1日どれだけやるのか、1時間ごとの仕事の進行について考えて、その計画の通りに行う。