教育の2大スタンスである教える側と教えられる側のギャップが発生し・・・
■仕事を教えない自称職人集団
中小企業が業務標準化にとりかかるまでには、次のようなプロセスがあります。
◆プロセス1 会社の規模が小さく、社員が少ない段階
業務をわかっている(できる)特定の個人が仕事に対応しているレベル
◆プロセス2 会社が成長し、人数が増加し始める段階
会社の成長は、人の増員ではなく仕事の増加が本質的要因です。その増えた仕事に対応するために人を増員するがすぐには対応できないので、誰かが新人に業務を教えなければなりません。この段階でよく発生する現象があります。
経営者は「仕事を(部下に)任せろ」と指示はするものの、囲い込み意識が強く、仕事が忙しいという本人自己都合解釈の大義名分が蔓延り、一向に業務を教える事が進まないというもの。不思議なもので、私の経験上、業績が上がらない会社になればなるほど、必要性は強く感じていても仕事を教えないようです。
・忙しいから教えられないのか?
・教える意識がないから教えないのか?
・教える方法がわからないから教えないのか?
おそらくは、そのすべてが当てはまっているのでしょう。繰り返しになりますが、標準化とは「標準を定め、それを組織の誰もができるようにする活動」です。
だから、そのポイントは、業務について社員間の「相互理解」の促進と「互換性」の確保になります。
■仕事の基準を見せる
現在の成熟・縮小社会では、仕事が高度化になっておりルーチンワークの仕事が減り、初めて対応する仕事が増えています。その影響として、【仕事は盗んで覚えなさい理論】が適用しにくい流れがあります。
もちろん、「マニュアル=仕事の基準」で対応できるのは基礎的業務であり、それ以上の仕事=付加価値を獲得する仕事にマニュアルは通用しません。しかしこの基礎力は、成熟・縮小社会でないがしろにされている事(目の前の業績に追われすぎて)も事実です。
■マニュアルの受け止め方の違い
マニュアルの受け止め方は、35歳以下は【資料】と受け止め、ベテラン社員は【回答・虎の巻】と受け止める傾向があります。資料と受け止める意味は、マニュアルを仕事の基準として考えているからです。回答・虎の巻と受け止める意味は、マニュアルは仕事を盗んで覚えられない人間が頼るものと見ているからです。
特に、35歳以下の社員が多い職場は、この傾向が強くなっています。この35歳以下の社員が受けてきた教育の内容や種類、そしてその教え方が飛躍的に従来とは質的向上をしています。裏を返せば、恵まれた環境で教育を受けてきており、システム化された教育こそが真の教育とする認識が強いから、「マニュアル=資料=仕事の基準」となるわけです。
「マニュアル=資料=仕事の基準」の基本概念は、共有化です。日本でのPC検索機能はヤフーが20年前の1996年にスタートさせています。日常生活で共有する知識を活用して育った世代からすると、マニュアルは資料であり、基準の考えとなるのは当然。ここに教育の2大スタンスである【教える側】と【教えられる側】のギャップが発生し、40代の上司が若手人材育成で苦悩するわけです。